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遙かなるヌシ
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竜也は、手紙を読み終えると、慌てて鮎美のもとに電話を掛けた。
『もしもし、鮎美さんですか。
今、手紙を読みました……
先生が、先生が御亡くなりになったって本当ですか?』
『あ〜竜也さん……』
鮎美は、電話の相手が竜也だと知ると、絶句し嗚咽で暫く声にならなかった。
暫くして……
『お祖父さんが、お祖父さんが……』
と声を上げるのが精一杯で、また暫く嗚咽の声が響いた。
『鮎美さん、鮎美さん……
しっかりするんだ。
どうして直ぐに知らせてくれなかったの……』
竜也の言葉に、ようやく鮎美も気を取り直して、少しずつ話し始めた
『ごめんなさい。
気が動転して、とにかくお祖父さんの安否が判るまで何も出来なかったの……
あらましは、手紙に書いた通りです。』
『鮎美さん、わかった。
とにかく、直ぐにそちらに行くよ。
詳しくはそちらでまた……』
竜也は電話を切ると、直ちに名古屋空港に向かい13:50発の福岡行きの便に飛び乗った。
名古屋から福岡まで1時間あまり… 機内の竜也は、木水との事が激しく走馬灯のように頭の中を廻っていた。
曰く…『釣りとは楽しむものであり、釣れなくても楽しめる釣り、釣れればいよいよ楽しい…そんな釣りをしたいものじゃな』
曰く…『猟師、木を見て森を見ず、森を見て山を見ずというが、それではいかん。釣果ばかりに捉われては目が曇る。もっと自然を、全体を見なければならぬ。我々は、自然のバランスの中で活かされているのじゃ。』
曰く…言葉は現実では無い。現実の一部を現したものでしかない。それで得た論理は如何に正しく思えたものでも、完全ではない。言葉に捉われるな。正義や善悪という言葉より、もっと大切な事があると、いつも心得ているべきじゃ。
曰く…『百聞は一見に如かずという言葉がある。知識はあくまで現実ではない。知識は経験と結びついて始めて理解となるのじゃ。』
そして、こんな言葉をふと漏らしていたのを思い出した。
『儂も何時お迎えが来ても良い老いぼれじゃ。孫の鮎美も一人前に成長したし、遣り残したことも無くなった。後は三途の川でどんな大物がいるか試す位かのう… ホッホッホッ…』