龍王物語
3.龍王と仕掛け
 
私の仕掛けに対する考え方は、道具としての使い易さにあります。
それには、シンプル・合理的・効率的・操作性・汎用性を備えた仕掛けが必要となります。
シンプルとは、文字通り簡単で判り易い仕掛けです。作りやすく使いやすい仕掛けです。
合理的とは、物理や自然の法則に適った仕掛けです。
効率的とは、確率の高い仕掛けです。狙った効果が確率高く現れる仕掛けです。
操作性とは、使いやすい仕掛けのことです。道具として自由にコントロール出来る仕掛けです。
汎用性とは、応用の利く仕掛けのことです。同じ仕掛けで、色々な事に対応できる仕掛けです。
それらの条件を満たすのが、これから紹介する発泡吸い込み1本針仕掛けです。

1.仕掛けの条件

鯉の索餌形態はエサをかじったり引きちぎったりする方法ではなく、吸い込む方式です。
その生態を利用して考えられた最も優れた仕掛けが吸い込み式です。特にバラケエサを使用して空針を吸い込ませる仕掛けは、針掛かりからいってもベストの仕掛けといえるでしょう。
 したがって、私は、吸い込み仕掛けの使えるポイントではそれをメインに使用し、そうでないポイントでは食わせ式を使用してきました。
 ただ、今までの吸い込み式の欠点は、多数の針を使用するために掛かりに弱いという欠点がありました。それを解消したのが発泡吸い込み1本針仕掛けなのです。
発泡吸い込み仕掛け
 この仕掛けを簡単に現しますと、食わせ式の1本針仕掛けと同じ仕掛けを使用して吸込み式として使用するというものです。すなわち、同じ仕掛けで食わせ式も吸込み式も使用できるというものです。
 今まで、私は、流れのある所は移動式Y字型ハリスの食わせ仕掛け、掛かりの多い所では1本針の食わせ仕掛け、流れの無い所では4本針の吸込み仕掛けと使い分けてきました。
 しかし、流れのある所も無い所も、掛かりのある所も無い所も同じ仕掛けで対応できないだろうかと考えるようになりました。
 針掛かりの良いのは空針仕掛けが一番で、その点バラケエサを使用した吸込み式は掛かりの良さは最高ですが、針数の多い吸込み仕掛けの弱点は掛かりです。
 食わせ式の場合は食わせ餌が針掛かりの邪魔をします。そのため、餌の大きさや硬さが影響し、活性の低い時は針掛かりが悪くなります。それを補うエサの付け方がヘアーリグですが、少し面倒です。
 そこで、思い付いたのが1本針の吸込み仕掛けです。すなわち、最も厳しい条件に対応できる仕掛けを使用する事により、オールマイティを目指そうというものです。
 ただ、針数が少なくなれば、針を吸込む確立も少なくなります。そこで思い付いたのが、発泡スチロールを使用して針の重みを消すと言うことでした。針の重みが無くなれば、周辺のコマセを吸込む時、より吸込まれやすくなります。あとは、ジャミに合わせて針のサイズや浮力を調整すればよい。そう考えると、逆の発送も成り立ちます。
 すなわち、ジャミ対策として、針に浮力を与えるのではなく、オモリを足して重くする方法もあるということです。また、浮力を大きくして針を浮かせれば、ソウギョやレンギョなどの中層魚を狙うこともできます。
 これで、方程式の出来上がりです。直線は曲線の一種であるという方程式がありますが、それと同じように、針の浮力を調整することにより、野鯉やジャミの活性に応じて、対応することが出来るわけです。エサを付ければ、食わせ仕掛けにもなります。
 この仕掛けは、ハリス部分だけを変更するだけでもOKですが、吸い込み式の針掛かりの確率を上げるために、オモリにネリエサを装着する方法を採っています。これにより、針とオモリとの距離を短くする事ができ、ばらけたネリエサの中に針が埋もれている状態となり、針をより吸い込みやすくなります。
 また、針とオモリとの距離が短いため、向こうアワセになる確率が上がります。
ハリスの長さは、止水域で10cm、流水域で15cm程にします。この理由は、流水域では鯉がエサを取る時は主に下流から来るためオモリが利きやすいので、吸込み易くする為にハリスを少し長くします。止水域では、鯉が必ず沖から来るとは限らず、横や手前から吸い込まれた時にもオモリが利きやすいように短くするわけです。
 オモリは、ネリエサの装着が良く、なおかつ仕掛けの安定の良いスパイクオモリを使用。
注意することは、発砲の針への付け方ですが、出来るだけ空針に近くなるように小さく分散して針に付けます。また、鯉用の場合は、針を浮かせるのではなく、ネリエサと一緒に水底に這うようにします。鯉が、ネリエサを吸込む時近くに針があれば、水と一緒に吸い込まれるというわけです。
 この仕掛けの利点は、1本針であるから障害物周辺を恐れずに攻めることが出来るだけでなく、非常にシンプルで仕掛けの作成も簡単であり、食わせ式と同じ仕掛けを併用できる。更に、針の大きさや浮力の調整により、ジャミ対策も簡単に対応することができ、なおかつ針を浮かせれば中層魚であるレンギョやソウギョも狙うことが出来るという、オールマイテイな仕掛けなのです。
 ブッコミ仕掛けでレンギョを狙うことが出来るようになれば、釣果は飛躍的に増大し、幻の魚であるコクレンのゲットも夢ではなくなるかもしれません。
 是非、多くの釣人に活用して戴き、鯉釣りだけでなく淡水大魚釣りの釣果アップに貢献することが出来れば幸いです。

2.ボイリーの仕掛け

ボイリー使用の仕掛けも、基本的には発泡吸い込み1本針仕掛けと同じで、ハリス部分をヘアーリグにします。スパイクオモリにコマセを付けるコマセ+ボイリーの食わせ仕掛けとなります。

また、コマセを使用しないボイリーのみの場合は、円盤テンビンをサキイトの代わりに使用します。

これは、絡みを防ぐためです。ハリスの長さはどちらも15cmと吸い込み仕掛けより5cm長くします。これは吸い込みやすくするためです。

向こうアワセで釣るブッコミ仕掛けの理想としては、針が吸い込まれる時には抵抗を与えず、針が口中に吸込まれた時には確実に掛かることです。

ここで重要なのは、当たり前のことですが、針が掛かる時のメカニズムは吐き出す時では無く、吸い込む時であるという事です。この基本的法則を取り違えていると、エサの針への付け方やハリスの長さの決め方そしてオモリの重さやサキイトの長さの選択などが論理的にできなくなります。

したがって、エサは小さくて軽いほど吸い込み易く、大きく重いほど吸い込み難くなります。オモリは軽いほど吸い込みやすく、重いほど向こうアワセになり易くなります。ハリスは短いほど向こうアワセが効きやすく、長いほど利き難くなります。これから考え出されたのが、半誘導式のオモリです。吸込む時にはできるだけ抵抗を与えず、針が吸い込まれた時には抵抗となって針を掛けるという仕掛けです。したがって、オモリの誘導距離は非常に重要なものとなります。長すぎるとアワセが利かず、短すぎると吸い込みが悪くなります。普通、長い活きエサを使用しない限り、5cmの誘導距離があれば充分です。